全国すべての市を制覇する旅に出た猫

日本にはたくさんの魅力ある市があるにもかかわらず、なかなか探訪する機会がないので、コツコツ全国の市に訪問してみようと思いました。このブログはそんな訪問の記録。

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今後はどこに注目して市を歩こう?〜『地名の社会学』を読んで〜

これまで市を訪問したときは、地域にあるお店は観光地に注目することが多かった気がする。市名の由来くらいは調べてみるが、それよりも狭い地域の地名にはさほど注意を払ってこなかった。

なんともったいないことをしてきたのか、とこの本を読んで思わず悔やんでしまった。゚(゚´Д`゚)゚。

 

今尾恵介『地名の社会学角川学芸出版、2008年

https://www.amazon.co.jp/地名の社会学-角川選書-今尾-恵介/dp/404703424X

 

目次

第1章 地名はどのように誕生したか

第2章 地名の現場を訪ねて

第3章 地名の階層

第4章 市町村名の由来

第5章 駅名を分析する

第6章 地名崩壊の時代を迎えて

 

著者の今尾恵介氏は、地図研究家でフリーライターとのこと。ウィキペディアの情報によれば、小さい頃から国土地理院の地形図などを愛読していたらしい。私のようなにわかとは大違いのツワモノだ。私も小さい頃から地図を見るのは好きだったが、氏には到底及ばない。

 

個人的に面白いと思ったのは、第2章の「武蔵野台地のクボ地名」と「東京の消えた地名をバス停に訪ねる」だ。氏曰く、「バス停には旧地名がよく残る」(88頁)。

 

 バス停の名前からインスピレーションを得ることがあるようだ。たとえば、本書では武蔵野台地のクボ地名についてページが割かれているが、筆者がクボ地名に関心を持つきっかけがバス停の名前だったのである。

 

実は、筆者がクボ地名を取り上げてみようと思ったきっかけは、武蔵村山市内でバスに乗った際、「次はシドメ窪」というアナウンスを聞いたからだ。本町三丁目とか中央二丁目のように個性を喪失した地名の多い日常を過ごしていると、シドメ窪のインパクトは強いものがある。(74頁)

 

確かに沿線住民でもないかぎり、なかなか耳にしない響きだ。筆者はここから、見た目には窪地ではないが、雨が降ってはじめて水が溜まり、微小な窪みの存在が明らかになり、それが地名として残るまでのプロセスを解明する。

 

武蔵野台地なのだから「窪」というのは不可解である。地図の等高線を調べても有意な窪地はないくらいの本当に微妙な窪地らしい。だが、地元の人は大雨が降ると水が溜まる、というのを経験則から知っているため、そこに「窪」という字を当てるのである(74-87頁)。

 

そのほか、江戸川区のバス停に「棒茅場」(ぼうしば)という地名を見出したり、足立区で「小右衛門町」という地名を発見したりする。どれも現代ではとても名付けられない名前だろう。棒茅場ともなれば立派な難読漢字である。

 

筆者のように変わったバス停名を聞いても、地図を持ち出してその由来を丹念に探るというのは素人には難しい。とはいえ、あっ、このバス停の名前、変わってる〜くらいのツッコミを入れるのは簡単だ。そうしているうちに、風景を見る感性が養われるんじゃないだろうか。

 

歴史の古い記憶に思いを馳せるもよし、新地名にどういった経緯で珍地名(!)になったのか想像を膨らませるもよし、命名には様々な人の希望や思惑が絡むからこそ、いろいろ楽しみがいがあるというものだろう^_^ 

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