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名字とは
名字の由来をたどると、だいたい「〜郷」に住んでいたから、といった具合に地名から名字を拝借していることが多い。
かくいう私の名字である「秋山」もその一つで、巨摩郡秋山(現山梨県南アルプス市秋山)を由来とする。
そもそも名字とは何か。鈴木亨の本によると名字とは、
名字の「名」とは名田のこと、つまり土地のことだ。「字」とは土地の小区分のことで、現在も檜原村字小沢などという使い方がされている。
武士は土着した土地の名、つまり「名字」を名乗りにしたのだ。そしてその土地を懸命に守った。これを名字の地とも呼ぶ(p.133)
名字から歴史を読む方法―姓氏をたどれば意外な日本史が見えてくる (KAWADE夢新書)
- 作者: 鈴木亨
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/03
- メディア: 新書
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日本史の授業で習ったが、現在では「一生懸命」と書かれるこの言葉も、もともとは「一所懸命」といって、一つの所領を命がけで守るという意味だ(鈴木、p.133)
名字と地名
このように今日の名字の多くは地名に由来するわけだが、基本的に名字は本家が承継し、分家はその名字を名乗れないから、分家は住んでいる地名を名字とする。それゆえ、日本には数多の名字が溢れることになるわけである。
もっとも移り住んだとしてもその土地の名前を冠することなく、もともとの地名に由来する名字をそのまま新天地に持ち込むこともある。
たとえば、戦国時代の花形役者である上杉謙信と武田信玄のそれぞれの名字のルーツをたどれば、上杉氏は丹波国何鹿(いかるが)郡(現在の京都府綾部市上杉)、武田氏は常陸国吉田郡武田郷(現在の茨城県ひたちなか市武田)とされる。
その後、上杉氏は上杉重房が鎌倉に赴き、その一家が後北条氏に圧迫されて、長尾景虎を頼って越後に行き、景虎が上杉の名字を名乗るようになる。上杉景虎が出家して上杉謙信というわけである。その後、上杉氏は越後から会津、その後米沢へと移される(鈴木、pp.147-148)。
名字が地名になったわけではないが、黒田長政が黒田家ゆかりの土地である福岡の地名をもってきたのが、現在の福岡県福岡市の地名の由来であり、人の移動に伴って地名も変遷するのである。
山梨県の2つの秋山
かように人と地名は深く結びついているわけだが、名字と地名が同じだからといって、常に関係があるというわけではないから面白い。
先に書いたように私の名字の秋山は現在の山梨県南アルプス市の秋山という地名を由来とする。同じ山梨県の上野原市にも秋山という地名がある。温泉施設もあるので、以前訪れたことがあったのだが、タクシーの運転手さんに「私、秋山という名字なんです」と言っても、「この辺じゃ珍しい名字だね〜」という返答で意外に思ったものである。
上野原地域おこし協力隊のホームページによると、上野原市の秋山は、
甲斐源氏加賀美遠光の長男秋山太郎光朝の城があったことにちなむといわれるが、また一説には周囲の山が秋には紅葉となって非常に美しいので「秋山の庄」と名づけられたともいう
前者であれば私の名字の秋山とも深くかかわるが、後者であれば景観を表した地名となる。現在、秋山という名字が少ないということを考えれば、後者のほうが正しい由来なのやもしれない。
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