全国すべての市を制覇する旅に出た猫

日本にはたくさんの魅力ある市があるにもかかわらず、なかなか探訪する機会がないので、コツコツ全国の市に訪問してみようと思いました。このブログはそんな訪問の記録。

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相模湖、加速する世界とは無関係な時間が流れている(神奈川県相模原市、2017年11月3日)

  

今回訪れたのは相模原市

 

さて、今回は神奈川県相模原市だ。2017年10月1日現在の人口が722,157人の大都市である*1。神奈川県で横浜、川崎に次いで三番目の人口を誇り、政令指定都市にもなっている。市政施行は昭和29(1954)年。宇宙航空研究開発機構JAXA)研究つながりで構成される「銀河連邦」と一角をなす。

 

www.city.sagamihara.kanagawa.jp

 

相模原の地名は、旧国名の「相模」にちなみ、相模原大地の由来する。相模自体は、箱根の坂から見下ろす国で「坂見」、平地が少ないから「険み(さがみ)」、「嶮上(さかがみ)」、賀茂真淵の「身狭上(みさがみ)」、秦酒公の一族が酒造りをはじめたところとして「酒醸(さけみ)」といった具合に諸説あるようだ。

 

chimei-allguide.com

 

今回訪れたのは、相模原市といっても、相模大野や相模原、橋本といった中核エリアではなく、山梨県と東京都との県境付近に位置する相模湖である。東京の中央線沿線に住む人であれば、高尾の先に相模湖駅があるのをご存知であろう。高尾は東京都、その3つ先の上野原駅山梨県相模湖駅と隣の藤野駅の2つがぴょこっと突き出るように神奈川県の駅となっている。

 

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↑逆光で見えないが相模湖駅

 

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相模湖はダムによって誕生した人造湖。1964年の東京オリンピックではカヌーの会場にもなった。東京から近いから気軽に行けるレジャー場所として絶好の位置にあるといえそうだが、東京から見れば高尾や奥多摩が西部にある中であえて相模湖まで行けなくてもいいと思うのか、休日の行き先としてメジャーという印象はない。

 

ゆったりと流れる昭和時間

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実際、駅前に降り立ってみれば、駅舎は新しいものの、街の時間は完全に昭和で止まっている。それがとてもいいのだが、昭和から更新されるほど観光客がいないことを物語っているようにも見える。意図的に昭和を残したというよりは、更新できずに残ってしまい、それが結果的にレトロ感を醸し出してるといったところか。

 

世の中では米国のスタートアップ企業が2017年中の空飛ぶ自動車の発売を発表したり*2SpaceXが地球旅行を提案したり*3、かつては、といってもせいぜい10年、20年前でさえも、SFのストーリーの中でしか登場しなかったテクノロジーがどんどん実用化されようとしている。世界は圧倒的なスピードで動いているのだ。にもかかわらず、ここ相模湖はそんな世界の動きとは全く無関係な時間軸の中で生きている。

空飛ぶ自動車と地球旅行が近い将来実現しても、われわれは空飛ぶ自動車で東京から中央自動車道を通って(空飛ぶ自動車が従来の高速道路を使うのかはわからないが、あちこち飛び回っても危険なはずだから、なんらかのかたちで走行(飛行)できる道が設定されるだろう)、相模湖の昭和遺産を見に来るのだろうか。海外からはロケットに乗って、空飛ぶ自動車のウーバーかタクシー的なものに乗って、相模湖観光に来るのだろうか。そして、そんな時代になっても相模湖ではおじさんたちが遊覧船や足こぎボート、射的の呼び込みをしているのだろうか。

 

私は昭和生まれだが、相模湖に来ている人の少なからずは平成生まれっぽい若者、ファミリー層であった。だから、人口構成的には相模湖も平成化しているべきはずなのだが、なぜかわれわれは相模湖の持つ昭和的空気に飲み込まれ、昭和生まれも平成生まれもみな昭和的な、 というか『ALWAYS三丁目の夕日』的な、ノスタルジックな雰囲気を帯びるようになる。子供がキャッキャと遊び、走って転ばないようにとそれを注意する親の声、デートにやってきたアベックたち(!)、30年、40年、50年前もこんな感じだったに違いないと思わせる温和で、それでいて身近ながら普段の生活とは違う非日常的な時間が流れている。岸には夕暮れを眺める人々、湖にはやや遅い時間からボートを漕ぎ出した人たちは、そろそろ暗くなったから岸に戻ろうとオールを漕ぐ腕の動きを早め(もしくは足こぎボートを漕ぐ足に入れる力を強め)、ファミリーは家路につくためにクルマへと急ぐ。この日の昼間の気温は20度を超えたが、それでも11月初旬の相模湖は冷んやりする。夕暮れとこの冷たい空気が人をしてますますノスタルジーな気持ちにさせるのだろう。なんとも心安らぐ時間の流れだ。

 

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↑「3倍の走ります 」のサガシー。3倍が速度なのか距離なのかはよくわからない。しかも何と比較してなのか。サガシーに乗ってみたが大して速いわけではない。スワン足こぎボートの速度の3倍だとしたら、スワン足こぎボートは微動だにしないことになる。

 

 

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相模湖の新名物、イルミネーション 

では、相模湖にまったく現代的要素がないかといえばそうでもない。その一つが遊園地プレジャーフォレストのイルミネーション「さがみ湖イルミリオン」だ。公共交通機関を使うのであれば、相模湖駅からバスが運行されている。

 

さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト/神奈川県相模湖の遊園地

 

ここにはスーパー銭湯がある。冷えた体を温めるためにここに行こうとしたのだが、道中のバスがなかなか混んでいる。しかも若者が多い。さらに言えば、若者のカップル率が高い。 そんなにみな温泉に入りたいのだろうか。にわかには信じられなかったが、われわれを乗せた神奈川中央交通のバスはそんなことはお構いなしに一路プレジャーフォレストに向かう。

 

着いてわかったが、大規模なイルミネーションがあったのだ。そういえばしばらく前から相模湖でかなりの規模感のイルミネーションをやっていると聞いたことがあった。東京ウォーカー等の情報誌にはクリスマスシーズン頃に各地のイルミネーション情報を掲載するが、相模湖のイルミネーションは必ず紹介される。初めて聞いたときはそんなとこでそんなことやってるんだね、といったぼんやりとした感想を抱いただけであったが、本日そのぼんやり記憶と眼前の現実がようやく実線で結びついた。

 

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イルミネーションといえばクリスマスの風物詩。自分も大学生の頃は当時の恋人とどこのイルミネーションを見に行くか頭を悩ませた。今見てもイルミネーションは十分に綺麗だが、当時はイルミネーションを見るという行為それ自体にもっと高い価値を置いていたと思う。イルミネーションを見て、恋人を後ろから抱きしめて、好きだよ、くらいは言ったかもしれない。いや、確実に言った。今から振り返れば、イルミネーションは自分たちが幸せであるという確認作業をする場だったようにも思うのだ。大学生くらいの恋愛って、この先も長く続くかよくわからない不安定さがある。その瞬間はお互いのことがとても好きで、しかし頭の片隅では若い頃の恋愛は長続きしないケースが多いことも知っている。結婚がゴールである必要はどこにもないが、学生恋愛の末に結婚した人たちに対して、あの二人は一途だ、と感じるのは、学生時代の恋愛が長続きしないことの事実を示唆している。多くの人が最初の彼氏・彼女とゴールするのであれば、それに特別な感想を抱くことはないだろう。当たり前は心に留め置かれることはない。関係が不安定だからこそ確認作業が必要になるのだと私は思う。

 

今ではイルミネーションを見てもそういった感覚はない。すでに結婚しているからかもしれないが、それ以上にわざわざ再確認しなくても、自分は幸せなほうかな、と感じているからのような気がする。そうであれば、行くべき場所はイルミネーションである必要はなく、そこがスーパー銭湯であっても構わないのである。

 

さがみ湖温泉 うるり

 

今回もとても楽しかった。さて、次はどこに行こうか。

 

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↑プレジャーフォレストで買ったお土産。しょうゆごまふりかけは相模原市の会社が製造。けっこう美味しいのでおすすめ。「じゃがですよ」は甲州ほうとう味。なので、厳密には相模原市ではなくお隣の山梨県の名物。広域連携ということにしておこう 

 

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↑射的屋でもらった「う◯ちくんスーパーボール」に興味津々 

 

 

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