群馬県みどり市訪問
今回訪れたのは群馬県みどり市である。平仮名地名から連想できるとおり、平成の合併によって新しく誕生した市だ。これまた名前から簡単に連想できるが、市名の由来は次の通り*1。
笠懸町・大間々町・東村合併協議会での市名の選定理由は以下の3点。
- みどり豊かな自然のあふれる、美しい街並みの市にしてもらいたい。
- 自然を大切にし、自然と共に栄えていくように。
- 明るく平和で清々しく、安心して生活でき、癒しのあるイメージ。
地名研究者が怒髪天を衝いて怒りそうな市名由来である。私は必ずしも歴史に即さなければならないとは思わないが、とはいえさすがにみどり市とはざっくりしすぎの名前である。ありふれた一般名称すぎて群馬県とは結びつかないし、風光明媚なわたらせ渓谷鐵道とも結びつかない。ニュータウンによくある「緑が丘」的な感じがしてしまい、むしろ山水の景色よりも都会のニュータウン、そびえるマンション群みたいな感じがしてしまう。さすがに他の名前でもよかったんじゃないかなぁ、と思ってしまう。
みどり市という市名。。。
ウィキペディアによると他の市名候補もあったようだ。その中でなぜに合併協議会がみどり市をいいと思ったのか、逆にいえばなぜ他の候補がダメと思ったのか、その根拠がよくわからない(合併協議会のウェブサイトがリンク切れ)。合併協議会には大学の教授などが名を連ねていたはずだが、こんな名前を選ぶようでは有識者に委ねた意味がなくなってしまう。
そもそもなぜに合併協議会に市名の最終決定を委ねるのか?民主主義だし住民の投票で決定すればよいのだ。有識者による委員会で決定するのは、世論に委ねると非合理的な名前を選びかねず、それでは市政にもそこに住む住民にとっても不利益であるというパターナリズムがあるように思われる。しかし、実際に合併協議会に選ばせた市名がみどり市である。結果論だが有識者に委ねた意味はあったのだろうか?これなら住民の投票のほうがまともな結果になったのではないか。少なくとも、住民の投票でみどり市になったとしたら、それは自分たちの責任として納得感を得られようが、どこの誰だか知らない第三者によって妙な市名を選ばれては納得しづらいのではないか。
それとも住民全員が全会一致で市名を選ぶことをないから、必ず票は割れ、選ばれなかった市名の支持者は新市名が気に食わず、ひいては新市名を選んだ人を嫌いになり、新たな市の一体感醸成を妨げるかもしれない。合併協議会という責任転嫁できるスケープゴートを用意したのかもしれない。
ところで、みどり市とお隣の桐生市との間で合併の話が出ていたらしい。研究会まで立ち上げられていろいろ調査が進められていたようだが、最終的にはご破算になってしまったようだ。みどり市側では4割が合併に賛成したが、6割は反対だった。
みどり市側の主な反対理由に、まずは市の一体性を高めることを優先する必要があるも指摘されている。単なる反対のための方便なのか、それとも合併して10年程度では一体性を達成するのは難しいのだろうか。
名前に違わず緑豊富なみどり市
散々名前についてやんや言ったものの、同市に緑が豊富なのは間違いない。 トロッコ列車で有名なわたらせ渓谷鐵道が市内を縦断しているのだ。わたらせ渓谷鐵道の写真などを見たことがある人はわかるだろうが、まさにみどり市は緑豊富な街なのである。
市名の是非はともかく、街中を散策しよう。今回のルートだが、東京から東武線で赤城駅まで行き、そこで昼ごはんを食べ、わたらせ渓谷鐵道の大間々駅から神戸(ごうど)に行き、徒歩で沢入(そうり)駅まで移動。大間々駅からは運良くトロッコ列車に乗ることができた。関東に住んでいるとわたらせ渓谷線のトロッコ列車はよく聞くこともあって、一度は乗ってみたいと思っていた。紅葉の時期だとなかなか席を確保できないようだが、連休初日とはいえ、紅葉シーズンではなかったのがよかったのだろう。
発車するときにディーゼルエンジンが起動する音が力強い。普段は電車を使っているので、このディーゼルエンジンの音は旅情を感じさせてくれるように思う。
わたらせ渓谷鉄道はもともとは国鉄の足尾線であり、足尾銅山などから産出される鉱物資源を輸送するための路線であった。しかし、足尾銅山が閉鎖され利用客が減少したため採算性が悪化、群馬県、関係市町村、地元企業が出資する第三セクター鉄道となったのである。
経営母体が第三セクターになったからといって、鉱山が復活し、利用客が戻ってくるわけではない。沿線住民がクルマを主に使うようになって益々採算性が悪化したことから、渡良瀬川の美しい景観を活かしたトロッコ列車に再生を賭けたのである。そうした苦境とそれを乗り越えようとする努力がトロッコ列車という収益源の誕生につながったのである(谷川、下記書、pp.65-68)。
限られたエリアを探訪しただけとはいえ、さすがわたらせ渓谷鐵道を抱えるだけあって緑が豊富で楽しかった。
写真一覧
↑地方都市で良く見かける有害図書排除活動
↑思わず見返してしまう(?)地名。すももも桃も桃のうちのような
↑赤城駅から大間々駅の途中にあった食堂。けっこう食べる場所が少なかったので、まさに救世主的存在
↑頼んだのはもちろん上州名物のソースカツ丼。蕎麦はオススメしない。お店としてもうどん推しだった気がする
↑トロッコ列車の車窓から
↑行く時間がなかったが、温泉が併設された水沼駅。なぜに河童の一人(一匹?)が直江兼続風の兜なのか?右下にサインがあるということは名のある作家の作品?
↑神戸駅に併設された昔の特急を改造したレストラン。トロッコ列車は涼しくはなかったので、冷房が効いた店内は天国
↑意外にボリュームのあった舞茸天ぷら
↑神戸駅〜沢入駅。誰にも会うことのなかったハイキングコース。しかし、隔絶された場所だといきなり人に出会ってもちょっとドキッとするかも
↑神戸駅〜沢入駅。道中に見つけたなぞのモアイ(?)像。ここは集合場所になり得るか?もっとも渋谷にあるのはモヤイ像だが
↑なぞのモアイ像の場所
↑神戸駅〜沢入駅。写真では伝わりにくいが、けっこうな威容を誇る草木ダム。ダム湖百選の一つ。日本にはいろんな百選があるが、ダム湖百選を管理するのは一般財団法人水資源地管理センター。いかにも国交省の天下りの受け皿っぽいが、実際理事長は元国交省の局長
↑神戸駅〜沢入駅。道中のドライブインで買ったご当地名物よもぎまんじゅうアイス。250円と少々強気の価格設定だが、素朴なよもぎの風味とこんにゃくのプニプニ感がミックスされたなかなかの力作
↑法務省主唱の社会を明るくする運動。全然知らなかったが、戦後すぐに開始された啓発活動。山中でこののぼりを見たが、運動の趣旨からすれば東京の街中こそ必要?
法務省:第67回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~
↑沢入駅着。あじさいの咲く無人駅
↑時間があったのでわたらせ渓谷線の終着駅の間藤駅まで。間藤駅はみどり市ではなく、栃木県日光市
↑トロッコ列車もいいが、案外通常の車両のほうが旅情あり(?)
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